マーケットの雰囲気を感じる – リスクオンオフは基幹商品で分かる
マーケット全体の雰囲気を掴もう!
相場は一つの市場だけで成り立っているわけではありません。金融市場の多くが絡み合って動いています。為替と株価。債券と商品市場など。そのため、多くのジャンルの市場を同時に見ておく事が肝要です。そしてその中でも「基幹商品」を分析する事で手間なくマーケットの雰囲気=リスクオンオフを見抜く事が出来ます!
前項の『相対性を利用する』で市場の関連についてお話ししました。『時間帯を制覇する』で何時に動くのかについても。まだ読んでいない場合は先にご覧ください。値位置についてはこの後『ライントレードを教える』でご説明します。
これら「市場の相関・時間・値位置」の3つを合わせるとどうなると思われますか?
マーケット全体の雰囲気、そして株価・為替・債券市場などの流れが分かります。
という事で今日はマーケットの雰囲気が分かるようになるためのロジックをご説明します。ぼやっとした(笑)考え方では売買に活かす事は出来ませんので、この記事を読んで買うべき時に買い、売るべき時に売れる投資家になってください。
リスクオンオフを見抜くコツ
まずリスクオンオフとは何か?
リスクオンとは、投資家がリスクを取って買いに行くマーケットの雰囲気の事を言います。リスクオフはこれとは逆に投資家が資金を引き上げて、リスクを(取ることを)避ける状態や雰囲気。
投資家が資金を入れて買いに向かう時は基本的に「株式」を買います。株価指数が際限なく上昇しているように見える状態。これがリスクオンの状態だとお考え頂いて問題ありません。
株価指数が頭打ちになると、今度は下落リスクが高まるため、「リスクを取らない=つまりリスクオフの状態」となります。
リスクオフになると投資家の資金はどこに行くのか?
→債券市場に流れます。
債券は安全資産と言えるもので、満期を迎えて償還日になれば金利分を上乗せして丸っとお金が返って来るからです。
※償還日(しょうかんび)::債券の満期日に額面金額が払い戻される日。
リスクオフは戦争とかで起こるん?
他にも、戦争などで世界情勢が悪化すると金相場(GOLD)にお金が流れますが、
債券が買われる時と金が買われる時は少し違うのです。
例えば戦争が起こったとします。
これを書いている2025年はロシアがまだウクライナ進行を続けており、金相場は最高値。

この時、債券つまりマーケット全体に影響を及ぼす債券と言えば「米国10年債」(もっと長期もある)が代表と言えますが、どうなっていたのか?


米国10年債の本体はほとんど動きません(笑)。見て頂くと分かるように、2000年~2025年までほぼ値位置が変わっていませんよね?
だからトレーダーが見るのは「米国10年債利回り(10年債の金利)」の方です。
その比較チャート(上の図)を見ても、高値圏からそれほど下落しているようには見えませんよね。少し下落傾向にあるが、高値圏持ち合いと名付けても良いような値動きだと月足チャートでは言えます。
リスクオフになると投資家の資金はどこに行くのか?→債券市場に流れます。
と、この上に書いたように、
確かに安全資産と言える債券市場に流れるのですが国債となるとほとんど動かないのです。
対して金相場(対米ドルCFD価格)は史上最高値の3791ドルに到達しているように、
※地政学的リスク・・・特定の地域で生じる政治的・軍事的・社会的な緊張が株価や商品価格の変動を引き起こすリスク(nomura)
しかしこの時、米国株価指数の代表格であるナスダック100もまた史上最高値にありました。

投資家が資金を入れて買いに向かう時は基本的に「株式」を買います。株価指数が際限なく上昇しているように見える状態。これがリスクオンの状態だとお考え頂いて問題ありません。
と最初に書きました。
ナスダックが上昇している以上、今は「リスクオンの状態」。
リスクオフになる時は次の通り
ナスダックが下がる時、つまり「リスクオフの状態」になる時は次のような状況です。
- 米国のFRBが金利を上げる、または利下げを渋る
- 株価指数を引っ張る個別株が頭打ちになる
- 不動産価格が崩壊する
- 明らかなバブルだと認識される
- 米国の財政や運営、経済状況が限界を迎える
つまり、「何とかショック」になるか、FRBが利下げをしない・出来ないか、米経済が危ないか。
リスクオフの原因は戦争とかではありません。
米国株価指数を引っ張る個別株(今ならM7)が伸びないことが一番の問題点となります。
または、米経済に陰り(かげり)が見えた時。
これがリスクオフです。
ではリスクオフを何で判断すれば良いか?
- FOMCで利下げをするかどうか
- M7の株価が終わるかどうか
- そして結局ナスダックが下落するかどうか
この3つを見ておけばOK。
※M7・・・マグニフィセントセブン。ナスダック市場に含まれるテック株上位7個を総称する。
リスクオフになったらどうなる?
なお、リスクオフになると、為替にも影響が及びます。
特に「クロス円が下落する」と覚えておきましょう。
ドル円ではないです。
ドル円は米国金利が上昇するという理由でのリスクオフなら上昇するからです。
しかしクロス円は主に日経平均の値動きと同方向へ動きやすい傾向にあるため、下落しやすいのです。
※もちろん、米国が「利下げが遠のいた」「利上げする」という状況になれば米ドルが買われるため、ドルストレートのユーロドルなどを売った方が値幅が出ることがあります。
それでもクロス円のショートが良い理由はこの下に書いてあります。

リスクオンオフの話のまとめ
後でも説明しますが、「基幹商品」という考え方が一番分かりやすいです。
基幹商品は株価指数ではナスダック100。そして、債券では米国10年債利回り。為替ではドルインデックス(米ドルの価値)。
- リスクオンの時はナスダック100が買われます。
- リスクオフの時は米国10年債利回りが上昇し、ナスダックは売られます。
- ドルインデックスは米国10年債利回りの方向へ動くので、為替ではドル円が上昇します。
しかしドル円は日経平均の影響も受けるため、リスクオフで下落する事があるため注意してください。
そのため、日経平均により連動しやすいクロス円(特にユーロ円)をリスクオフの時には売る方が成功しやすいでしょう。
ドル円が上がってもユーロドルが下落してくれればユーロ円は下がる。そしてドル円が株価の影響で下落すればダブルで下がるのがユーロ円だから。
【リスクオフの見極め方まとめ】
- 米国が利上げする→ドルが上がり、株が下がる
※米経済が危ないと利下げ出来ないことがある - M7の株価が終わる・頭打ちになった→何らかの経済不安があった
- そして結局ナスダックが下落した
これが基幹商品から見る、マーケットの雰囲気の考え方です。
利上げ利下げとインフレ指標について
FRBが利下げするためには物価が上がり過ぎない事が重要です。インフレの指標を見ておきましょう。
この3つをチェックしておきます。
※リンクはみんかぶ。経済指標のページをブックマークしておこう
大抵の場合、目標とする政策金利は2%です。
しかし利下げをすると物価が上がってしまうため、これら物価の経済標結果が先月・前年より高いと『利下げはちょっと出来ないなあ』という判断になることが多いです。
利上げ利下げと、労働市場について
次に、労働市場が好調か?を見ておきましょう。
言わずと知れた米雇用統計。※→みんかぶ雇用統計のページへ
この経済指標で「雇用者数」と「失業率」をチェックします。
- 雇用者数が前月の数値と今月の予想値に比べて多いか少ないか
- そして、失業率は増えているか減っているか(もちろん減っている方が良い)
ただし雇用統計はよく前回までの発表結果を下方修正する事があるので、そのニュースにも目を光らせておいてください。
FRBのホームページを英語で読めというわけではなくて、X【旧ツイッター】で誰かが速報を流すので大丈夫。
※Xで「経済指標」と検索してください。これは指標発表があるごとに行います。証券会社の経済指標の欄や上に載せたみんかぶを見ても遅いです。
Xは大体1分程度で指標発表の結果が分かる事が多い!
※下方修正について速報では出ていないことがあるので、Bloombergや日経新聞でその後チェックしましょう。
そして、雇用と利上げ利下げの関係は原則的に、
雇用の結果が悪ければ(雇用者数が少ない・失業率が多い)利下げに向かい、結果が良いなら利上げ方向です。
※程度の差もあるし、実際にするかしないかは別。あくまで方向性として。
しかし実際は
- 雇用統計の結果が悪ければ米株価指数は下落します。
ドル円も下落します。もちろんクロス円も下落する事が多い。 - 雇用統計の結果が良ければ米株価指数は上昇します。
ドル円も上昇します。クロス円も上昇する事が多い。
雇用が悪いから利下げに向かうなら米株価にとってはプラス材料では?と思いがちですが、現状では悪いわけです(笑)。
悪いから下がる。
そして、その後でFRBがまだ利下げ出来る状態にあれば株価は復活することがあります。
利下げするために必要なものは?
つまり、物価指数の結果が2%に近いか・近づいて行っているか(毎月の流れとして)を見てください。
利下げをするためには物価が高くなり過ぎないという状況が必要です。
- 物価が高すぎない状態で雇用が悪いなら、
FRBが利下げすることで株価が復活出来ます! - しかし物価が高すぎる状態で雇用が悪いと、
FRBが利下げ出来ないので株価が雇用統計で下がりっぱなしになります。
スタグフレーションになれば、それ以上FRBが利下げ出来ない(物価がさらに上がってしまう!)ため、株価下落の救済措置を取れません。そうなれば、米株価指数は下落トレンドになるでしょう。
FRBの使命は「物価と雇用の安定」です。
どちらも上手く行っていれば良いし、どちらも失敗したなら(笑)
米経済はくすぶるという判断がなされます。
- 雇用の最大化(Maximum Employment):可能な限り多くの人々が雇用に就けるように経済を刺激すること。
- 物価の安定(Price Stability):物価が安定的に推移し、インフレが抑制される状態を維持すること。
– FRBの2つの使命(GOOGLE)
マーケットの雰囲気を感じるためのヒント
金市場全体の雰囲気が分かる絡繰りは、次のようなものです。
- 何時に動くか(動いたか) 時間
- どの値位置から反発するか 値位置
- どの市場でそれが起こっているか 市場の相関
これが時間と値位置と相対性(各市場の関連、相関関係)。
例えば、株価指数のナスダックが米国オープンの時間に押し目を付けて上昇した。
その時、日経平均も夜間にかかわらず追随して上昇を開始した(日本への値動きの波及)。
すると、ユーロ円も押し目を付けて上昇を開始した(為替市場への値動きの波及)。
つまり、ナスダックが米国市場の開始とともに押し目の「値位置」へ下落したので反発したわけです。それを見た日経平均のトレーダーが買い、ユーロ円の為替トレーダーがやはり買った。
この時のマーケットのムードは「イケイケ」。
リスクオンと捉えらえます。
『ナスダックが調子良いのなら、米国市場が開いている間はクロス円も日本の株価指数も買っておいて大丈夫だろう。』こう考えられるからです。
自分が取引する商品だけではなく、
マーケットで重要な役割を果たしている市場(基幹商品)を常にチェックしておく。
この場合それがナスダック市場だという事です。
マーケット全体の流れを見る
まずは全体を知った上で、自分が取引する株・先物や通貨ペアがマーケットの中でどう動くかを考えましょう。
個別の要因がない限り、
全体が上昇傾向にあるのに特定の商品だけが暴落することは少ないのです。
※個別市場の状況によって異なる場合はあれど、同系統の市場は同じ傾向になりがち。
めちゃくちゃ簡単だと思いますが、まずはこういうところからです。答えが無くても、もちろん分かりますよね?
つまり、類似する市場を見てその値動きが本当かどうかを確認してください。
基幹商品からの影響を考えるようにすれば簡単!
重要な市場(基幹商品)がある時間にある値位置まで到達すると、
それに影響されてマーケット全体が急変します!
【一例】次の場合はどうなる事が多いでしょう?
各市場はあくまで全体の中の一つでしかない。しかし重要な市場を見ておけば、複数市場を観察するよりも簡単にマーケットの方向性を把握出来ます。
他市場に影響を与える重要な市場を「基幹商品」と呼びます。
ナスダック市場を基幹商品の一つだと位置付けています。基幹商品は3種類。何でしたか?
マーケットは絡み合っている
一市場だけをテクニカル分析しても、その精度には限界があるでしょう。
例えばオージー円を取引する時、
- オージー円だけを見ている人
- 日経平均、AUDUSD、原油、ドル円なども同時に見て取引している人
この2者ではどちらのトレーダーが、その後のオージー円の方向を当てることが出来るでしょうか。
聞くまでもないですね(笑)。
マーケット全体の流れを掴んでいる人と、まるで分っていない人。
どちらが有利かもまた、聞くまでもない話です。
マーケット全体を見てください。そして、取引商品に関連する市場を全て見るように心掛けた方が良いでしょう。主要な商品(メジャーな市場)で戦う時は特に市場の関連が分かりやすいので、意識してください。FXとCFDマーケットは多くの市場で成り立っているからです。
マーケット全体のチェックの仕方は次の通りです。
そうすることで正確に現在のマーケットの雰囲気を察知することが可能になるのです。
全体を見て、その上で投資判断すべき(まとめ)
全体を見る事で、少なくとも方向性だけは正しく掴むことが出来るでしょう。
- 相対性と値位置と時間 この3つが重要!
- 基幹商品を分析する
- 関連市場にも同様の傾向が見られるか?をチェックする
「いつ、どの市場を、どの値位置で買うべきか?」
それが分かるのなら有利だということはご理解頂けるはず。
だからこそ、一つ一つの分析精度を上げながら
マーケット全体の流れを見られるように、日々レベルアップしたいところですね。
全体を見て、その上で投資判断をすべきです。
※リンクは当講座の記事
この3つが重要で、3つを抑えると値動きは判明する。
これが今回一番お伝えしたいことです。
何時に、どの市場を、どの値位置で買うべきか?
それが分かるのなら有利だということはご理解頂けたはず。
【相関関係】追随商品(例えば日経平均)を買うために、
【時間】米国オープンでナスダックが
【値位置】押し目のラインで跳ねた事を確認する。
こういう理屈をご説明しました。
次は
- 値動きの意図について
- 目標算出について
の話をして行きます。この下へ!※もう少しで終わります
今何を目的に動いているか?
値動きには必ず意図があります。
何を達成しようとして動いている?
それをまず考えてみてください。
そのように考えたことがありますか?
パッとしないような動きもありますよ(笑)。ごちゃごちゃしているだけの意味もなく思える動き。
それすらも意味があります。値位置の高低をそれぞれ付けているからです。
高値安値には意味があり、「無駄に上がったり下がったりしているわけではない」のです。
一つ分かり易い例を挙げておきますね。
持ち合い相場の意味。
持ち合い(値が上にも下にも行かずに、一定の範囲内で維持されている状態)にすら立派な意味が幾つもあります。
1.『じらす』という理由
嫌になるくらい動かない状態は投資家が離れていきます。
投資家が離れきったところで良い動きをしたいわけですね(笑)。
出来れば、あまり皆さんが見ていない時がベストですよね。または恐がって手を出さない時に動き出すとか。
これが一つ目。
2.俗にいう『時間稼ぎ』
値動きが揃うのを待っているわけです。
なぜ揃うのを待つかというと、
マーケット全体の流れが上昇の時でないと上昇するだけのパワーが得られないから。
3.ある『ラインへぶつかる』のを待っている
そのラインは斜めに伸びているので、横の(持ち合いの)値動きは
いずれ斜めのラインへぶつかります。
いつまでも持ち合いでいられるわけではないので。値が動かないままだと横へ動きます。そして、いずれ斜めのラインへぶつかる。または通り過ぎます。それを見て持ち合い抜けの判断をすることが可能!※例えば三角持ち合い抜け、など。
斜めのラインはこれ!
- ギャンファン
- フィボナッチファン
- フィボナッチチャネル
- 平行チャネル
- トレンドライン
※ファンやチャネルについては有料の動画コースで教えています
値動きの意図のまとめ
『持ち合い』という一見動かないので意味がないと思われがちな値動きでさえ、 3つの意味があります。
- じらす
- 時間稼ぎ
- 斜めのラインにぶつかるのを待っている
その他値動きについてはまた別の機会にお話ししますが、もしも今現在あなたが「値動きの目的」を考えていないとしたら大変危険なことです。持ち合いに巻き込まれて大切な時間とお金を消耗してしまうから。
値動きは意図があってチャート形状を構成している
- 次の上昇のためのパワーを溜めている
- 他の市場の状況が揃うのを待っている
など、簡単に言えば、買いや売りが集まるタイミングまで待っているのが「持ち合い」。
そして、チャート形状が整うとトレーダーは買います。
その時、高値安値から目標値が算出され、どこまで買うかが決まる。※目標値に付いては後ほど
エントリーエグジットポイントは
持ち合いの間にもう決まっているのです。
値動きには意図があり、高値安値の値位置にも意図があります。
では次へ行ってみましょう。次は「ウソとホントを考える」です→
「高値安値には意味がある」、この言葉を深掘りしました。
持ち合いや急騰・急落でダマシに合わないための考え方、駆け引きの話をご紹介します。
